冬は暖かな家。夏は最小限の冷房で過ごせる家。
これを実現するために、太陽エネルギー利用のパッシブデザイン、高断熱・高気密をベースに少ない冷暖房エネルギーで過ごせる住まいを設計します。
室温環境
居住者の健康を保つために大切な室温環境
高効率化 Efficient Technology
少ないエネルギーで快適な室内環境を実現するよう設計します。
車で例えるなら、エンジンがアイドリングに近い状態で一定速度を維持するイメージ。
- パッシブデザイン
- 高断熱
- 高気密
の三位一体の設計が基本。
オプションの全館空調は、シンプルな技術で実現。
太陽光発電などエネルギーを作る設備機器は別に考えます。ここが重要です。
燃費が悪いのを、発電で補うことで相殺する考えとは180度異なります。
1. パッシブデザイン Passive Design
パッシブデザインの要素として、
- 気候
- 自然エネルギー利用
- 地域性・街並み・文化
- 存在するモノ(既存建物、価値ある古い物)を活かす
などが挙げられますが、ここでは自然エネルギーを建物設計に活用することを述べます。
地域性を考えるパッシブデザイン
高断熱、高気密が基本です。建築地の気候に合わせた室温性能設計を行います。
横浜市は、冬期の日射量が多い地域です。冬の日差しを室内に取り入れる太陽熱エネルギーなどを計算し、快適な室温環境の設計を行います。
反対に、冬に日射量の少ない日本海側等の地域では、横浜市とは室温性能設計が変わるのがパッシブデザインです。
パッシブデザインという言葉を聞いてもイメージしにくいと思いますが、日本古来の建物の多くはパッシブデザインの要素を持ち合わせていると言えます。
それは、夏には日差しを防ぐ、屋根の長い軒の出であったり、蒸し暑い日本の夏の暑さをやわらげるめに自然の風を取り入れる工夫など、先人の知恵の結晶です。
パッシブデザインの目的は建物の基本性能向上
ここ横浜においては、冬の暖房がほぼ不要になる高性能の家をつくることはできますが、夏の暑さ、特に湿気から逃れるためには、どうしてもエアコン等が必要になります。
パッシブデザインが大切であるのは、冬の暖房エネルギーを軽減し、夏のエアコン冷房の運転時間を短くできることにあります。これは建物室温環境の「基本性能」が高いということです。
関連記事: SHIBA建築工房 Journal パッシブデザイン・カテゴリー記事 >>
2. 断熱性能
断熱性能等級4は同基準内では最高ランクですが、特に冬期間の断熱性能を考えたとき十分とはいえません。そこでSHIBA建築工房は断熱性能等級4を上回る、以下の基準で設計します。
最低基準: HEAT20 G1(UA値0.56以下)
推奨基準: HEAT20 G2(UA値0.46以下)
※上記UA値は、横浜市における値。
横浜市・地域区分6 外皮平均熱貫流率UA値 |
|||
断熱性能等級4 | 0.87 | [W/(m2・K)] | |
HEAT20 G1 | 0.56 | [W/(m2・K)] | |
HEAT20 G2 | 0.46 | [W/(m2・K)] | |
小さい数値が高性能 |
【解説】外皮平均熱貫流率 UA値とは:
UA値 [W/(m2・K)] = (建物全体から逃げる熱量)÷(外皮の面積)
室内から外皮(天井、外壁、窓、床)を通って屋外へ逃げる熱量を、外皮全体の面積で除した値。
UA値が小さいほど省エネ性能(断熱性)が高いことを示します。
HEAT20: www.heat20.jp >>(外部リンク)
3. 気密性能
相当隙間面積・設計C値は、 1cm2/m2以下とします。
施工時における目標C値は、0.6cm2/m2以下です。
横浜市は、比較的温暖ですが、省エネ住宅をつくるために気密性能は不可欠です。
引違い窓は、気密が取りにくい構造を持ちます。この引違い窓を南側に用いることが多くありますが、気密性能・実測C値は0.3〜0.6cm2/m2の実績があります。
【解説】C値とは:
建物全体に存在する隙間面積[cm2]を延べ床面積[m2]で除した数値。
この数値が小さいほど、隙間が少なく気密性能が高いことを示します。
隙間面積には玄関ドア・窓の隙間も含まれます。
気密性能が高いこと(高気密)の利点
- 窓を閉めれば、家全体をキッチリと閉じることができます。気持ちいい風を入れたいときは窓を開けるだけ。決して息苦しい家ではありません。花粉や有害物質など室内に入れたくないものを制御しやすくなります。
- 冷暖房の電気代が安くなります。高気密の建物は窓を閉めれば、家全体の隙間が僅かのため、エアコンの効率が上がり電気代も少なく済みます。
- 室内の温度ムラが少なくなります。冬期に足下が寒い経験があると思います。これは断熱が足りないだけでなく気密が悪いことも影響します。暖められた空気は上昇します。ここで気密が悪いと、暖かい空気は天井他から屋根裏等へ逃げます。これと同時に逃げた空気と同量の冷たい空気が室内に入り込み、足下が冷える結果となります。
- 花粉除去などを含めた計画的な換気が可能になります。24時間換気扇などで花粉他を除去した空気を室内に取り込むことで、汚染物質の制御が可能となります。気密の悪い建物では、数多くの隙間から外の空気が侵入するため、取り入れる空気を制御できません。
高断熱・高気密住宅の効用
高断熱・高気密は省エネルギーだけではなく、暖かい家は、居住者の健康を保つためにも重要なことです。その具体例を以下に。
アレルギー等も改善されるケース
室内の温度差による血圧変動:ヒートショック
※イラストの出典: 横浜市建築局『なっとく!省エネ住宅を選ぶべき6つの理由』
高断熱の建物はパッシブデザインに注意を
冬に日射しを室内に取り込むことで、室内が暖まり暖房運転時間が減ります。
しかし夏に日射しが室内に入ると、冷房運転時間が長くなり省エネではなくなります。このため夏の日射しが室内に入らないように設計するのが重要です。
しかも高断熱の建物は、熱を逃がさない(正確には逃げる熱が少ない)ため、一度暖まった室内温度はなかなか下がりません。このためよりパッシブデザインが大切になります。
ここで難しい問題があり、それは春そして特に秋の日射しです。温暖化が進んでいることもあり、春や秋にも気温が高い日が多くあります。このときの南中時の太陽高度は低いため、屋根・庇で太陽光を遮ることができず窓から室内に入ってしまいます。このため、理想的には春や秋において窓の外で日射しを遮る工夫があると、省エネ性能を高めることが可能となります。
全館空調(冷暖房) option
高い気密性能、断熱性能の建物をベースに、家庭用エアコン1台で全室冷暖房が可能です。
詳しくは、エアコンで全館空調ページをご覧ください。
※建物規模によってはエアコン2台が必要です。