室温環境:断熱・気密・パッシブ

冬は暖かな家。
夏は最小限の冷房で過ごせる家。

これらを実現するために、高断熱・高気密をベースに、
パッシブデザインで最適化を行い、
少ない冷暖房エネルギーで過ごせる住まいを設計します。


室温環境

居住者の健康を保つために大切な室温環境

高効率化 Efficient Technology

少ないエネルギーで快適な室内環境を実現するよう設計します。
車で例えるなら、エンジンがアイドリングに近い状態で一定速度を維持するイメージ。

  1. 断熱性能(高断熱)
  2. 気密性能(高気密)
  3. パッシブデザイン

の三位一体の設計が基本。
オプションの全館空調は、シンプルな技術で実現。

太陽光発電などエネルギーを作る設備機器は別に考えます。ここが重要です。
燃費が悪いのを、発電で補うことで相殺する考えとは180度異なります。

1. 断熱性能(高断熱)

HEAT20 G1またはHEAT20 G2の基準で設計します。

  横浜市・地域区分6
外皮平均熱貫流率UA
  断熱性能等級4 0.87 [W/(m2・K)]
  HEAT20 G1 0.56 [W/(m2・K)]
  HEAT20 G2 0.46 [W/(m2・K)]
  小さい数値が高性能
【注意点】UA値の小さな住宅が、必ずしも省エネ住宅とはいえない

その理由は「建物表面積」「太陽熱」「換気の熱損失」を考慮してないからです。

UA値は、外壁・窓などの熱貫流率(断熱性能値)です。外壁や窓などの表面積(外皮面積)は考慮しない数値です。このため、延べ床面積・UA値の両方が同じ住宅でも、表面積が大きな家は、冬の暖房エネルギーは多く必要となります。

また窓にトリプル硝子を用いると、UA値は小さくなりますが、窓を通して太陽光から得られる熱量(日射侵入率)が低くなり、冬期の暖房エネルギーが増加するケースも生じます。

そして換気による熱損失もUA値には含まれず、暖房エネルギーを減らすための判断としてUA値だけでは十分でありません。

これらの理由からUA値だけで判断せず、暖房エネルギー計算等を行うことで、本当の省エネ住宅の設計・シミュレーションが可能となります。


【解説】外皮平均熱貫流率 UA値とは:
UA値 [W/(m2・K)] = (建物全体から逃げる熱量)÷(外皮の面積)
室内から外皮(天井、外壁、窓、床)を通って屋外へ逃げる熱量を、外皮全体の面積で除した値。
UA値が小さいほど省エネ性能(断熱性)が高いことを示します。

HEAT20: www.heat20.jp >>(外部リンク)

2. 気密性能(高気密)

相当隙間面積・設計C値は、 1cm2/m2以下とします。
施工時における目標C値は、0.6cm2/m2以下です。

横浜市は、比較的温暖ですが、省エネ住宅をつくるために気密性能は不可欠です。

気密性能が低くなりがちな引違い窓も採用

引違い窓は、室内と庭を緩やかに繋げるのに効果的な窓の1つで、古くから用いられてきました。しかし引違い窓は、気密が取りにくい構造を持ちます。この引違い窓を南側に用いることが多くありますが、気密性能・実測C値は0.3〜0.6cm2/m2の実績があります。

気密性能C値を向上させるために、屋外との繋がりを断つ閉塞的な住まいになるのであれば、人が心地よく暮らせる住まいになるのだろうかという疑問がわきます。地域性を考えた、ほどよい高性能がこの気密にも言えます。

【解説】C値とは:
建物全体に存在する隙間面積[cm2]を延べ床面積[m2]で除した数値。
この数値が小さいほど、隙間が少なく気密性能が高いことを示します。
隙間面積には玄関ドア・窓の隙間も含まれます。

C値・相当すき間面積計算式

気密性能が高いこと(高気密)の利点
  1. 窓を閉めれば、家全体をキッチリと閉じることができます。気持ちいい風を入れたいときは窓を開けるだけ。決して息苦しい家ではありません。花粉や有害物質など室内に入れたくないものを制御しやすくなります。
  2. 冷暖房の電気代が安くなります。高気密の建物は窓を閉めれば、家全体の隙間が僅かのため、エアコンの効率が上がり電気代も少なく済みます。
  3. 室内の温度ムラが少なくなります。冬期に足下が寒い経験があると思います。これは断熱が足りないだけでなく気密が悪いことも影響します。暖められた空気は上昇します。ここで気密が悪いと、暖かい空気は天井他から屋根裏等へ逃げます。これと同時に逃げた空気と同量の冷たい空気が室内に入り込み、足下が冷える結果となります。
  4. 花粉除去などを含めた計画的な換気が可能になります。24時間換気扇などで花粉他を除去した空気を室内に取り込むことで、汚染物質の制御が可能となります。気密の悪い建物では、数多くの隙間から外の空気が侵入するため、取り入れる空気を制御できません。

3. パッシブデザイン Passive Design

高断熱・高気密性能をベースに、地域性を考えたパッシブデザインにより最適化し、少ないエネルギーで快適な室温環境が得られるよう設計します。

地域性を考えるパッシブデザイン

高断熱、高気密が基本です。建築地の気候に合わせた室温性能設計を行います。

横浜市は、冬期の日射量が多い地域です。冬の日差しを室内に取り入れる太陽熱エネルギーなどを計算し、快適な室温環境の設計を行います。
反対に、冬に日射量の少ない日本海側等の地域では、横浜市とは室温性能設計が変わるのがパッシブデザインです。

パッシブデザインという言葉を聞いてもイメージしにくいと思いますが、日本古来の建物の多くはパッシブデザインの要素を持ち合わせていると言えます。
それは、夏には日差しを防ぐ、屋根の長い軒の出であったり、蒸し暑い日本の夏の暑さをやわらげるめに自然の風を取り入れる工夫など、先人の知恵の結晶です。

passive design / パッシブデザイン

パッシブデザインの目的は建物の基本性能向上

ここ横浜においては、冬の暖房がほぼ不要になる高性能の家をつくることはできますが、夏の暑さ、特に湿気から逃れるためには、どうしてもエアコン等が必要になります。
パッシブデザインが大切であるのは、冬の暖房エネルギーを軽減し、夏のエアコン冷房の運転時間を短くできることにあります。これは建物室温環境の「基本性能」が高いということです。

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気候変動・温暖化による変化

近年、気候変動が起きていると言われています。春秋の中間期が短くなり、暑さが厳しい期間が長くなってきました。
そこで問題になるのが、秋あるいは初冬に気温が高くなったときに、夏の日射しを遮るよう設計された屋根では、室内に日射が入りこみ、室温がオーバーヒートしてしまうケースが発生します。このような日が多くなってくると、太陽高度だけで決めてきた屋根による日射遮蔽だけでは十分に機能しなくなり、窓の外側などで日射遮蔽するのが有効となります。


全館空調(冷暖房) option

高い気密性能、断熱性能の建物をベースに、家庭用エアコン1台で全室冷暖房が可能です。
詳しくは、エアコンで全館空調ページをご覧ください。
※建物規模によってはエアコン2台が必要です。


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